月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「いいえ。
商いに大切なのは、継続です。
あなたが持ってきたのは、ぶつ切りの人間関係ではありません。
その一点で、我々は受け入れたのです。」
それは、礼が高貴な身であると知っての交渉だったということだ。
「また、どこかで会えるのかしら?
まぁ兎に角、村人を預かってもらえて良かったわ。」
礼は安堵しているようだが、朱雀にはこの男が信用できなかった。
消えかけた月が、天中から下り始めた。
間もなく新月か。
朱雀たちは、客室をあてがわれていた。
隣で眠る礼は、疲れたであろうぐっすり眠っている。
朱雀は目を閉じたものの、眠れずにいた。
―スッ…
誰かが入ってくる気配があった。
布の擦れる音が近づいてくる。
朱雀はじっとしていた。
自分が不安になってはならない。
礼を守のは自分の役目である。
侵入者が頭上にきた瞬間、朱雀は礼を抱きかかえた。
―カチャ
朱雀が侵入者の姿を見たときには、張湯たちが侵入者に剣を突きつけていた。