月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「お姫様、やっぱりあなたはお姫様ですね。」
「…」
現実を受けとめきれなかった。
涙すらもこぼれ落ちてしまう。
陽春も、彩夏も、劉向も、みんな自分の手からすり抜けてしまった。
「そんな弱いお姫様の方が、私の好みですが。」
芥は指先で雫を払った。
「さて、情報料は…」
「えっ?
とるの!?」
「当たり前です。」
そう言うと、ぐっと引き寄せられ、まぶたに唇を落とされた。
「そこまでだ。」
驚く間もなく、朱雀に抱かれていた。
いつの間に―。
「十分な料金を頂きましたので、我々の裏家業もお教えいたしましょう。」
「裏家業?」
「自警団です。
あまり遠くまでは行けませんが、この近隣は我々の息がかかっています。
銀の多くはそれで稼げます。」
「それって…」
次の村までの、賊以外の安全を保証してくれるということだ。
「お姫様の唇は、また次の機会に―…っと。」
「んー!んんんっん!!」
朱雀は何を考えたのか、礼の唇に噛みつくように重ねた。
礼は天井を仰ぎ見る。
嗚呼、月が、もうすぐ消える―…