月物語2 ~始まりの詩にのせて~
―5―
「げっ!お前それ買うのか?」
「いえ、買いませんよ。」
「何言ってんだ。
しっかり握ってるじゃねーか。」
「姫は、こういうの結構好きなんですよ。」
「は?
てか、赤様に見つかったらやべーだろーが。」
「見つからないように、こっちの小さい方を。」
「って、やっぱ買う気じゃねーか。」
「何を言っているのです。」
そう言いながら、花英は店主に銭を渡した。
王宮から出た花英は変わった。
いや、今の方が本来の姿なのかもしれない。
人の持つ黒い部分をさらりと出す。
花官には、人知れない苦労があるのだろう。
それを口にしない花英を、獅子は気に入っていた。