月物語2 ~始まりの詩にのせて~
州境の城門には、堕落した兵がいた。
遠目からでも、立ち姿だけで規律がしっかり守られているのかどうかはわかる。
獅子が預かった証文を見せると、印を見た兵が直立した。
伝令を飛ばしたらしく、太守が出てきた。
「挨拶などよいから、早くここを通せ。」
花英がいつにもなく強声で急く。
城中に通そうとする太守をやっと退け、砂漠に入った。
「お前の予想だと、姫は唐綿を通るのか?」
花英は何も答えなかった。
今まで花英の予想は外れていない。
王と祝融は無事なのだろうか。
今度ばかりは花英の予想が外れることを願う。
やっと新たな王が立ち、国が再起動するのだ。
王は飾りにすぎない。
だが、国には必要な存在だ。
とにかく今は、砂漠を走り出しかねない花英を、駱駝に乗せておくことだった。