月物語2 ~始まりの詩にのせて~
労役に当てられてから何日が経ったのだろうか。
毎日が同じことの繰り返しで、その日々が長いのか短いのかさえわからない。
実は、ほんの数時間のことではないのか、そんなことも考えた。
だが、確実に夜は来た。
いや、本当に夜だったのか。
あれは闇ではなかったか。
死ぬことを考えなかったわけではない。
楊太僕の安否が確認できるまでは、と思い定めているだけだ。
影が長くなってきた。
やはり、時は流れている。
「柴秦様。」
自分を誰かが呼んだ。
そうだ、私は柴秦だ。
不思議とそれは他人のもののように聞こえる。
柴道として過ごしたからか。
「柴秦様………柴秦様。」
柴秦はそれが現実のものであるとふと気づいた。
呼ばれるはずのない名だ。
声の主は背後にいる男のようだ。