月物語2 ~始まりの詩にのせて~
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「はい、今朝方。」
芥という村長が出てきて言った。
千日紅のことである。
あと少しだった。
―早くお会いしたい…。
千日紅に着いたときには空は赤く染まっていて、今日はもう進めない。
花英は全身を駆け巡る黒いものを感じた。
「一足遅かったか。
まっ、明日には追いつけるだろ。」
獅子はポンっと軽く、花英の肩を叩いた。
それで、少しうずくものを抑えられる。
獅子は宿の交渉を始めだした。
その間、名のわからぬ少年をちらりとみて、花英は自分に呆れかえった。
少年のせいではない。
王に会えなかったのは、月周りなのだ。
明日には追いつける。
獅子は持ち前の信頼させる菌を使って宿屋をあっさり承諾させた。
しかも、村長の家だ。
部屋にいると、村長が酒釜を持ってきた。
少年はすでに夢の中である。