月物語2 ~始まりの詩にのせて~

―6―



―――――――――――――――――――――――――――――――



「はい、今朝方。」



芥という村長が出てきて言った。



千日紅のことである。



あと少しだった。



―早くお会いしたい…。



千日紅に着いたときには空は赤く染まっていて、今日はもう進めない。



花英は全身を駆け巡る黒いものを感じた。



「一足遅かったか。
まっ、明日には追いつけるだろ。」



獅子はポンっと軽く、花英の肩を叩いた。



それで、少しうずくものを抑えられる。



獅子は宿の交渉を始めだした。



その間、名のわからぬ少年をちらりとみて、花英は自分に呆れかえった。



少年のせいではない。



王に会えなかったのは、月周りなのだ。



明日には追いつける。



獅子は持ち前の信頼させる菌を使って宿屋をあっさり承諾させた。



しかも、村長の家だ。



部屋にいると、村長が酒釜を持ってきた。



少年はすでに夢の中である。





< 215 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop