月物語2 ~始まりの詩にのせて~



「いいのか?」



花英はちっとも急ぐ気のないラクダの背で言った。



「アイツは、お前が思ってるより大人だよ。」



「は?」



「オレたちが何者なのか、そんなことはどーでもいい。
一緒にいても、家族の寂しさは埋められねーし、かといってオレたちの役にも立たねー。
自分の居場所は、自分で作るものってことを本能的に理解したんだろーよ。」



「では、あそこが彼の居場所だと?」



「そーじゃねーだろ?」



獅子が珍しく気だるそうな声を出した。



そうではないのなら、やはり自分のせいなのでは。



獅子はそう言いたいのだろうか?



花英は苦しくなった。



心の狭さに吸い込まれていく。



ーあぁ…。
早く…、早くお会いしたい。
この窮屈な世界から、抜け出したい。




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