月物語2 ~始まりの詩にのせて~
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「花英!
見ろ、あれ。」
獅子の指さす方に、賊が列をなしていた。
捕らえられた者もいるようだ。
まだ、こちらには気づいていない。
「あの丘陵に隠れるぞ。」
花英は獅子の後を素早く追った。
「捕虜は村人か?」
隠れながら花英は聞いた。
「いや、それにしては少ねー。
旅人だろーよ。
どーする?」
「どーするって、姫に一刻も早くあわねばならないのだ。」
「…ったく、どいつもこいつも。
そんなに姫が大事か?」
「当たり前だ!!!」
「ちょっ、オマエ声がでけー。
…って、
見つかっちまったじゃねーか!
あの人数だ。
捕まってるやつらもいることだし、やるぞ。」
「くそ!」
相手は20人ほどの賊だ。
獅子なら難なく倒せる。
こういうとき、自分ももっと強ければと思う。
決して弱いわけではなく、むしろ、普通の人より腕は立つ。
だが、王のそばにはいられない。
ここでも、獅子頼みなのである。
ーそれも、作戦のうちか?
わざと私を怒らせたのではないのか?