月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「花英ー、獅子ー!」
姫が軽やかに手を振っている。
背後にはピタリと祝融(朱雀)の姿があった。
「おいおい、お姫さ…ー
「姫っっっ!!!」
花英は弾かれるように、駆け寄って跪いた。
「ご無事で何より。
ずっと…ー
「二人とも何て良い時に!」
姫の元気な声に、自分の声がかき消される。
ずっと…、何と続けようとしたのか?
すっかり小麦色に焼けた姫の肌が、美しく輝いている。
ー愛おしい。
自分が思っていたよりも、ずっと愛おしい存在だった。
やはり、陽春の影響なのだろうか?
「獅子、花英殿。」
張湯が、牢の中にいたときとは違う、澄んだ笑顔を向けてきた。
なぜか、この男の顔が憎らしい。
「で、これは一体どういうわけです!?」
「それが…」
張湯が苦笑し、姫が胸を張って答える。