月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「潜入よ、せ・ん・にゅ・う!」
花英の思考回路が火花を散らす。
ー潜入だと!?
「おうおう!
何だかお姫様が急にたくましくなったじゃねーか!」
王嫌いな獅子が、上機嫌で言った。
「貴様まで!
礼に無礼を働くな!!」
祝融の言葉に姫が笑う。
いや、笑っている場合ではない。
「張湯殿がいながらなぜこのようなことに。」
張湯の顔を見上げると、きれいに巻かれた額当てが気になった。
怪我でもしたのだろうか?
「だって、中にはいるのにはこれしかなさそうなのよ。
何だか警備が厳重で。」
考え込むように、姫が顎を指でつく。
「賊にしては隙のない、軍法に沿った警備なのですよ。」
張湯が説明を加えた。
「何か匂うな。」
獅子が棍棒を撫でながら、眩しそうに空を見上げる。
「だからって…ー
「で、こいつらは?」