月物語2 ~始まりの詩にのせて~



「潜入よ、せ・ん・にゅ・う!」



花英の思考回路が火花を散らす。



ー潜入だと!?



「おうおう!
何だかお姫様が急にたくましくなったじゃねーか!」



王嫌いな獅子が、上機嫌で言った。



「貴様まで!
礼に無礼を働くな!!」



祝融の言葉に姫が笑う。



いや、笑っている場合ではない。



「張湯殿がいながらなぜこのようなことに。」



張湯の顔を見上げると、きれいに巻かれた額当てが気になった。



怪我でもしたのだろうか?



「だって、中にはいるのにはこれしかなさそうなのよ。
何だか警備が厳重で。」



考え込むように、姫が顎を指でつく。



「賊にしては隙のない、軍法に沿った警備なのですよ。」



張湯が説明を加えた。



「何か匂うな。」



獅子が棍棒を撫でながら、眩しそうに空を見上げる。



「だからって…ー
「で、こいつらは?」



< 227 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop