月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「私は、もっと苦しまなくてはならないの。
民たちの憤り、悲しみ、虚しさ…そういうものをこそ、受けとめなければならない。
それは同時に、私のエゴでもあるわ。
何か出来るのではないかという、期待。」
自分はこの姫に、何と返せばよいのだろうか。
「そのエゴなくして私は私を名のれない。
私が他の民と何が違うか?
何も違わないのだ。
このエゴこそ、私を私たらしめる。」
太陽が眩しかった。
砂漠には慣れているが、どこの地よりも輝いている。
苦しいほどの光。
目を背けたくなる。
それが、王という存在なのか。
陽春が慕ったのは、この光なのかもしれない。
「ならば、私も貴女の駒としてお使いください。」
「駒?
まさか。
貴女は私の力になって。」
「ほー、言うようになったじゃん。」
「獅子、貴様もいい加減にしろ!」
「まーまー、落ち着いて、赤。
で、あんたも勿論協力してくれるわよね?」
「「あっ。」」
獅子は王を連れ戻す任務としてここへ来たのである。