月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「劉向は、結局どちらに殺されたのかわかりません。
獅子が、一度禁牢に忍び込んで、私と会っています。
それを知った二人のうちどちらかが、口封じのために殺したのでしょう。」
「獅子と会ったの!?
なぜ、彼は私に…。」
「禁牢に忍び込んだとあっては、獅子が捕縛されます。
際どい場所なのです。」
朱雀はそう言ったが、礼は違うような気がした。
力も信頼もないからではないのか。
「陽春は、―――」
いきなり朱雀にその名を出されて、今度は大きく揺れた。
「おそらくあなたの暗殺を命じられていました。」
礼は、目を瞑った。
最後の、悲哀の頬笑みが瞼に蘇る。
多分、そうなのであろう。
「彼は、…」
朱雀はその続きを呑みこんだ。
王が必死に動揺を隠しているのに気がついたからだ。
それは、朱雀をも動揺させた。
―この不快感はなんだろうか。