月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「それについては、私に考えが。」
獅子をどうするか、花英は予め考えていた。
そもそも、獅子は王と目的が違う。
第一、獅子は王に忠実ではない。
始めに考えていた計画とは異なってしまったが、手はある。
王嫌いな獅子が、王側に歩み寄ったからだ。
それは非常に良い展開だった。
「やはり、我々は別行動を取りましょう。」
その選択は、王を連れ戻させないが、獅子という強手の身兵を置けないことになる。
「何でだ?」
獅子の当然の疑問である。
「あなたと私は、州境で顔が割れてしまったでしょう?
それでは姫が潜入できません。」
「確かに。」
「だが、獅子の腕は欲しい。」
祝融が言った。
「だからこそです。
我々の任務は姫を連れ帰ること。
姫が潜入してくだされば、我々も中にはいるしかありません。」
「じゃ、この状況は?
まさか、無かったことにするのか?」
「いいえ。
それはもちろん……」
「こういうことだろう。」
祝融は花英の意図を汲み取っていた。
「おいおい、お前ら……」
獅子の周りに陣が浮く。
「その陣は六刻で解ける。
まぁ、今回は劉巾がいないからな、時限式だ。」
祝融が口角を上げながら言った。
獅子は再び祝融に足止めを喰らったのである。
「何でオレばっかなんだーーー!!!」
獅子の声が、空高く舞い上がったのだった。