月物語2 ~始まりの詩にのせて~
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伯升は、なぜかこの旅が面白いと思わずにはいられなかった。
王も祝融にも忠義はない。
自分の見ているものは、張湯ただ一人。
張湯の命によってのみ、王らを守る。
おもしろいから守る対象だというわけではない。
「街に入ります。」
張湯が王に言った。
伯升はそれなりに危険な仕事をしてきたが、これほど自分が興奮することはそう多くもない。
王や祝融はどのような気分なのだろうか?
こういったときの祝融の感情は読み取れない。
王に礼儀を欠いたときに怒るのを見るくらいだ。
街は物々しい雰囲気を漂わせていた。
城門には兵の姿はない。
逃げ出したのか、或いは殺されたのか。
どちらにしろ、見方はどこかにいる獅子らしか望めなかった。
「お前ら、手はずはいいな?」
伯升は手下に指示を出した。
この手下はというと、襲ってきた賊を王が雇ったのだ。
王という存在には謎が多い。