月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「あなたたちを雇うわ!」
賊に囲まれ、じりじりと迫られる中、王が言い放った言葉だった。
警戒はしていたが、砂風に紛れて賊が近づいていたことに気づくのが遅れた。
伯升も張湯も砂漠に慣れているわけではない。
さらに、王と祝融を連れている。
気を張っていなければならず、それにも限界がある。
視界が開けていたがために、隙を憑かれた。
賊の腕はほぼ素人に間違いない。
だが、賊は砂漠を熟知しているようだった。
「銀二百粒でどう?」
王の発言は、賊だけでなく伯升たちをもひっくり返らせた。
「なっ、何をおっしゃるのです!」
張湯が背後で守る王に言った。
これ以上張湯の心配事を増やさないで欲しい。
祝融は王を助言し補助するのが仕事だ。
これでは祝融の仕事を張湯がやっているようなものだ。
「だって、彼らは…ー
「お下がりください!」
いくら相手が弱くても、20人相手に二人を守りながら闘うのは用意ではない。
張湯は自分が守る。
「だーからー!
待ってって言ってるでしょ!!!」
王の言葉とともに、突風が吹いた。