月物語2 ~始まりの詩にのせて~
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二日前のことだ。
柴秦は新しく入団してきた賊の顔を見て愕然とした。
あれは、紛れも無く獅子ではないか!!
「よう!」
獅子が背中越しに話しかけてきた。
「よう!、ではないわ!!」
柴秦は自分の声を必死に抑えた。
腹立たしいでもなく、嬉しいでもなく、不思議な気分だ。
昨夜、とうとう待ちきれなくなった高進が、単独で楊太僕の元へ行き、見張りに見つかる前に突き帰された。
高進は、刺し違えても方狼の元へ行きかねない。
もう、限界が来ていた矢先に獅子がやって来たのである。
「お前、こんなところで何をしているのだ。」
「おい、オレに会えて嬉しいのはわかるが、もっと自然にしろ。
賊が賊を見張ってやがる。
とんでもねーとこだな。」
柴進は、疑問に思っていたことが一つ解決した。
時々、人が連れて行かれ、惨い死体となって転がされている。
その後、数人が何らかの理由で処断されている。
それはつまり、内部に潜入者がいないか、賊同士で見晴らせているのである。
一人見つかれば芋づる式に出てくるようだ。
もはや、人のすることではない。
そして、賊のすることでもない。
何だ、この管理構造は。