月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「高進という従者がいる。
体術に優れたものだ。
昨夜、楊太僕を助けようとして楊太僕本人に拒まれたらしい。
私は時を見て、脱出する命を受けている。」
楊太僕は、獅子が来るこのときを待っていたのだろうか?
「オレらも、20人ほど仲間がいる。」
「何だと!
そんなにか!」
「正確には現段階では二人。
後日潜入する。」
「それは確実なんだろうな?」
獅子は珍しく即答しなかった。
背後だけに、表情はわからない。
「20人か。
しかし、まだ足りないな。
楊太僕を逃がせるかどうか。」
「いや、逃がすのは3人だ。」
「3人?
それはいったい…」
楊太僕と同じくらい重要な人物がいるというのか。
高進にもそんな話は聞いていない。
「お前は、後々会うことになろうよ。
今は知らない方がいい。
拷問を受ける可能性だってあるからな。」
そのまま、獅子は去っていった。
宿舎は別らしい。
探し回って疑われるのはごめんだ。
寝床に高進宛ての書き置きを残した。
皆が寝静まったころ、高進はこれを取りに来る。
それがやり取りの仕方だ。
柴秦は未だに高進が来たことに気づいたことはない。
それはそうと、策の立て直しだ。
獅子の力は大きい。
そして、仲間も増える。
仲間、果たしてそう呼べるものたちなのか。
一体誰を引き連れてくるのか。
明日、もう一度獅子と会わなければならない。