月物語2 ~始まりの詩にのせて~
沈黙になるのを恐れて、朱雀は続けた。
「けれど、宋春の行為には、若干腑に落ちない点があります。」
確かに、朱雀の礼を守る力は邪魔だった。
雉院には、幾ばくの猶予もない。
次の新月までに、力を使い果たさせなければならなかった。
朱雀は、生かすことに迷いはなくても、殺すことに迷いがあった。
そこを、雉院は弟を使って利用した。
が、なぜ、弟を使ったのだろう。
別のものでもよかったはず。
むしろ、その方が都合がいいはずだ。
「それに関しては、飛燕もね。」
礼は、話題が変わってほっとした。
「だって、最後にあの場に連れてくる必要はなかったもの。」
「では、あの場にいらしたのは、あの二人が?」
「そう。
部屋の外の守兵は、宋春が何とかしたのね。
それで、私の後を、劉巾が追っていた。」
これも、朱雀にとっては納得できない点であった。
宋春なら、つけられていることに気付いていたはずである。