月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「嫌だ!」
ーへっ?
突然の子どもがだだをこねるような声に、一瞬それが姫の声だとわからなかった。
聞き間違えか?
「嫌だと言っている!」
「「………。」」
姫は、従者にしがみついている。
方狼も黙ったまま姫を凝視した。
少女の一面。
それもそうか。
従者がいなければ何も出来ないのだ。
一人になることに不安を覚えたのか?
それとも、現実が見えたのか?
「従者といえど、そちらのお方もかなりの身分の方でしょう。
悪いようにはしません。
どうか落ち着かれませ。」
栄楽は宥めるように言った。
それは、自分をも冷静にさせた。
ーこんな小娘に、何を手こずっているのだ!
我々の計画を、潰させはしない。
「姫様、この従者と共にいるために、どこまでできますか?」
誇り高き愚かな姫の答えは、決まっている。