月物語2 ~始まりの詩にのせて~
ー2ー
明道が衛青(えいせい)の下を訪ねたのは、獅子達が出立して数日後のことだった。
衛青に、急ぎ出兵させるためだ。
身体の回復は、十分とはいえないがこれ以上は寝ていられない。
衛青は同期だ。
同期の中でも、一番の出世頭である。
明道にも昇進の機会はあったが、敢えて拒んできた。
位が上がるほど権力は大きくなるが、民の声は小さくなる。
何より、楊太僕についていきたいと思った。
楊太僕は、今の赤国になくてはならない存在だ。
窮地に立った赤国の民を、楊太僕以外の誰が救えるというのか?
その楊太僕を救うため、明道は昼夜を駈けた。
結局、王は禁軍を動かせなかった。
だが、王が宮殿を飛び出していったとき、意味はあったのだと悟った。
衛青は明道の来訪を喜んだが、首を縦に振ることはなかった。
代わりに、騎馬百騎と歩兵四百を貸してくれた。
二週間かけ丸葉縷紅に行軍し、現在隣町に本拠地を置いて塞を偵察させていた。
獅子がこの街にいるとわかった時には、すでに塞に潜入した後だった。