月物語2 ~始まりの詩にのせて~
房厨殿に行ったときに、見た死んだはずの女。
彼女が、礼の大切な人とそっくりだったからだ。
彼女は、礼を最初で最後に認めてくれた人だった。
そんな人を、見間違うはずない。
彼女は数年前、交通事故で他界していた。
「彼女がいたから、気付いたの。」
朱雀は首を捻った。
「それはないと…」
「なぜ?
彼女は絶対あの人よ。」
「いえ、その…」
「はっきりいってくれてかまわないから。」
「先ほど申し上げた通り、あなたが今回の初めての例です。
生命の国で死んだものは、黄国で“白”という魂になり、そして赤ん坊の器に入ります。
だから、生命の国のお姿をしているはずがありません。」
「じゃあ、すっごくにた他人のそら似ってこと?」
「おそらく。
けれど、そのおかげであなたは戻られたわけですが。」