月物語2 ~始まりの詩にのせて~



房厨殿に行ったときに、見た死んだはずの女。



彼女が、礼の大切な人とそっくりだったからだ。



彼女は、礼を最初で最後に認めてくれた人だった。



そんな人を、見間違うはずない。



彼女は数年前、交通事故で他界していた。



「彼女がいたから、気付いたの。」



朱雀は首を捻った。



「それはないと…」



「なぜ?
彼女は絶対あの人よ。」



「いえ、その…」



「はっきりいってくれてかまわないから。」



「先ほど申し上げた通り、あなたが今回の初めての例です。
生命の国で死んだものは、黄国で“白”という魂になり、そして赤ん坊の器に入ります。
だから、生命の国のお姿をしているはずがありません。」



「じゃあ、すっごくにた他人のそら似ってこと?」



「おそらく。
けれど、そのおかげであなたは戻られたわけですが。」




< 27 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop