月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「“正式”には、と申しました。」
朱雀が正面から見つめてきた。
礼は、朱雀を見据えた。
「まだ、方法があるのね。」
朱雀は黙って頷いた。
希望はある。
彩夏は、生きなければならない。
いや、礼自身が生きていてほしいと願っている。
何もかもおいて来た礼と、何もかも失った彩夏。
似ているようで、どこか異なっている。
生きろというのは、礼のわがままなような気がした。
だが、もう白紙にはもどせないことも事実だった。