月物語2 ~始まりの詩にのせて~
―3―
張湯は拷問を受けていた。
過酷なものではない。
いちを、という形だった。
「おい。その辺にしておけ。」
現れたのは獅子だ。
獅子は、部下に下がらせた。
二人だけになる。
「まだ、耐えられます。」
張湯は、にやりと笑った。
「ほう。
さすが血死軍を率いていただけのことはある。」
獅子は苦笑した。
張湯の兄は、大逆を起こした。
“王殺し”
だが、真の目的は、弟の張湯の暗殺だった。
いつかは、そんな日が来るのではないかと、張湯は思っていた。
兄は自分を恨んでいた。
それでも、張湯は兄を嫌いになることはなかった。
兄に呼ばれた晩、これが最後なのだと悟った。