月物語2 ~始まりの詩にのせて~
劉向はもう年だった。
けれど、心の強い父だったから、息子たちの足枷になりたくなかったのだと思う。
劉向は、劉巾が“天力”を持っているとわかったとき、劉の名をやった。
だから、三人のうち劉巾だけが劉の名を持っている。
父から名を継がせるという話を聞いたとき、兄も自分も嫉妬したりはしなかった。
父が自分たちを愛していることは知っていた。
兄が、父を殺した。
それだけは信じられなかった。
今でも信じられない。
いや、信じたくないだけかもしれない。