月物語2 ~始まりの詩にのせて~
2章 旭日昇天 ~明道爆走篇~
―1―
明道は、馬に跨り街道を駈けた。
子州を出て、丑州の南だ。
全力だった。
街道を東に駈けると、虎州(こしゅう)がある。
明道は、虎州州都にある赤宮城に向かっていた。
子州の砂漠を越えるのに、かなりの時を要した。
予定より遅れたというわけではないが、なるだけ早く抜けたかった。
砂漠では主に駱駝を使うが、乗っているとどうも走った方が速いような気がしてくる。
実際は、走って砂漠を渡るなど殆ど不可能だ。
無駄に体力を消耗するわけにもいかない。
この先の道のりも、そう短くはないのだ。
何も知らず、のんびりと歩く駱駝への苛立ちを、明道は堪えながら越えた。