月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「王が、戻られたそうです。」
配下の言葉に、青年はただ頷いた。
「しかし、殺されたっていうのは、手間だったのでしょうか?」
くだらない。
青年は目を閉じたまま、ふっと息をついた。
王が誰だろうと、死のうが死ぬまいが、そんなことはどうでもよい。
自分のやるべきことは変わらない。
“己の役目”ただそれだけだ。
「天の考えなど、理解しようとするだけ無駄だ。
とにかく、我々は我々の仕事をする。」
「はっ、はい…」
部下の男は、青年の怒気のある声にたじろいだ。
「それより、丸葉縷紅(マルバルコウ)はどうなっている。」
丸葉縷紅は、赤子州の街である。