月物語2 ~始まりの詩にのせて~
部下は、俯き加減で状況を説明し始める。
「中心部は殆ど賊徒に占領されました。
民の一部は解放されましたが、働き手と女子供は捕虜となっています。
かなり過酷なことを強いられているようです。」
―あの人が愛する民に、何てことを!
青年は頷き、その先を促す。
「捕虜の中に手の者を紛れ込ませましたが、どうやらその中にはいらっしゃらないようで、おそらく重要人物として捕らえられているようです。」
少なからず青年が予想していたことだった。
「内密にすませたかったが、もはやそんなことは言ってられぬ。
王が帰って来たなら、太尉にも動いてもらわねば。」
各地に跋扈している賊徒は、州軍では抑えきれなくなっていた。
特に、赤子州(せきねしゅう)、赤丑州(せきちゅうしゅう)は、広大な上に殆どが砂漠地帯だ。
配備するにも、移動するにも、軍の数が圧倒的に不足している。
賊徒もそれを承知で集まっているのだろう。
賊徒の規模は膨らむばかりだった。