月物語2 ~始まりの詩にのせて~
―3―
栄楽は、丑州と子州の州境にいた。
丑州側の、小さな町である。
一度城門を見て、引き返してきたところだった。
今は、子州に行こうとする者はほとんどいない。
子州の砂漠は危険だからである。
単に環境が過酷だからということではない。
賊が出るのだ。
賊徒などどこの州にもいるが、子州に集まっている賊徒は組織的に大きい。
官軍は、それを抑えきれずにいる。
それでも子州に行く者がいて、その大半は新たに流入する賊徒だった。
農民の格好をした男が何人か通って言ったが、手荷物からみて、あれは賊徒だろうと栄楽は思った。