月物語2 ~始まりの詩にのせて~
栄楽は、子州の地図を広げた。
明日、子州に渡る。
急いでいたのだが、日が暮れ始めたので、様子だけ見に行って引き返してきたのだ。
食事が運ばれてきた。
女だったが、先ほどの主人と同じような影がある。
この町の住人は、皆影を持っていた。
それでも天も王も、何もしない。
この町はまだいい。
小さいが、州境の警備兵に囲まれている。
表面上荒らされることは滅多にない。
少々銭を渡せば、まるく収まるのだ。
命を奪われるまではない。
官軍も、それに目を瞑っている。
栄楽は、それが腹立たしくてしょうがなかった。
しかし、今は我慢だ。