月物語2 ~始まりの詩にのせて~
子州の賊徒は、官軍の怠惰を見逃さなかった。
一気に勢力を拡大し、子州で縄をはっている。
村町一つ、平気で壊滅し、街を占領したりする。
人を殺し、金目の物を奪い、女を連れていく。
兵は別の仕事があると言い、襲われている村を助けようともしない。
兵が不足している?
ふざけるな、と栄楽はいつも思っていた。
とんだ腰抜けどもだ。
これは兵の、いや国の怠慢なのだ。
どっかのお偉いさんが捕まったと聞いた。
栄楽にとって、それは絶好の機会だ。
子州に向かう理由は、まさしくそれなのだ。
『闇塩の道』を軌道にのせたい。
官軍の目を子州に釘づけにしておけば、“こちら”はかなり自由に動ける。