月物語2 ~始まりの詩にのせて~
頭が危険信号を出している。
礼は押さえつけられた。
力にではない。
男の瞳にだ。
なぜ自分は声を発しないのだろう。
男の瞳は、陽春のそれとは違う。
冷たい―――。
「呼ばないの?」
男は言った。
守兵のことだろう。
礼は少し目を据えた。
男に気づかれないように、自分の太腿に装着した刃物に触れる。
その上から、暖かいものが降りてきた。
それが、男の手だと気づいたのは、一呼吸おいてからだった。