月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「朱雀。」
凄い剣幕の朱雀が、守兵諸とも入ってきた。
礼の姿を認めると、それが嘘のように削ぎ落とされる。
朱雀の声だった。
先ほど外から聞こえたものとは違う。
ほっとした顔の朱雀は、守兵を下がらせた。
「どうなされたのです?」
朱雀は眉間に皺をよせる。
礼の横に、腰を下ろした。
礼は変な格好で横たわっていたから、慌てて起き上がる。
朱雀には背を向ける格好になった。
何を言えばよいのだろう。
暫く黙っていると、朱雀が再び口を開いた。
「何も、なければそれでよいのです。」
沈黙が流れる。
暫くすると、朱雀は出て行った。