月物語2 ~始まりの詩にのせて~
―もしや、彼が。
「獅子、殿ですか?」
振り向いた時には、男は背を向けて歩いていた。
後ろからだとよく見えないが、笑ったような気がする。
「入れ。」
伯升は眉を寄せる。
これは、抜け道出はないのか。
なぜ、こんな場所をみすみす教えるようなことをするのか。
読めない。
だが、伯升は男に嫌な感情を持てなかった。
嵌められている感じもない。
「何度言えばわかる。
私は罪人なのだ。
そう易々と来るもんじゃない。
いくらあなたでも…」