月物語2 ~始まりの詩にのせて~
捜していた主の声が、聞こえた。
途中で止まる。
―あぁ、良かった。
生きている。
伯升は、心からそう思った。
「伯升か!?」
驚きつつも、名前を呼んでくれた。
「当たりです。」
鉄格子に近づく。
拷問の傷らしきものもあるが、思ったより元気そうだ。
「獅子殿。
私はこんなことは頼んでないぞ。」
怒った顔も懐かしい。
「だって、潜り込んでたんだ。」
やはり、この男が獅子だった。
怒られて口を尖らせている。
―ずるい。