月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「わっ、私にも…」
「まったく、何をやっているのだ、お前は。」
張湯が呆れていた。
だが、伯升にはせっかく助けにきたのに、などと言う気持ちはない。
生きていてくれた、それだけでいい。
「どうしてここへ来た。
お前まで捕まったらどうする。」
「私が捕まるなら、それでもいいです。
ですが、隊長が捕らえられる理由はどこにもありません。」
「それは、私が決めることではない。」
「何を言っておられるのです。
さっき、王に会いに行きました。」
「何!?」
「あの王は、本当に隊長を解放してくれるのですか。
不名誉を、はらってくれるのですか!」
張湯は、伯升から獅子に目を移す。
「獅子殿。
すまないが、彼を外まで連れ出してもらえまいか?」
「俺は別にいーけどよー。」
獅子は、それは無理な気がした。