月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「一体この世界は、どーしちまったんだろうな…。
まっ、俺なんかにゃわからんことか。」
そうは言っているが、獅子の目には光がある。
「で、今日は、うれしいお知らせ。
お前、近いうち出られるぞ。
身体、なまってねーだろうな?」
―ん?
「どういうことだ?
免責になったのか?」
「違う。
脱獄だ。」
獅子が、片頬をあげて笑う。
「何をいっている!
私はそんなことはしないぞ。」
「駄目だ。
もう約束しちまったし。」
「誰と!
何の!」
一体誰がこんな不名誉なことをしようとしたのか、まったく許せない。
「ふっふん。
これを聞いたら、お前は出るね。」
いいから早く言え、と張湯は心の中でど突いた。
楽しそうなのが余計に不愉快である。