月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「主上は、お前と彩夏を牢から出すんだと。
俺は彩夏の方に回る。
これは俺じゃなきゃ無理なんで。」
「私は王を殺そうとしたのだぞ。」
「それは、兄貴だろ?」
獅子が眉を寄せる。
「いいか。
お前はお前だ。
兄貴になるな。
兄貴の荷物まで背負うな。
背負うのは、兄貴の存在、ただ一つ。」
張湯は床に目を落とす。
「荷が重すぎると、あんなちっぽけな主上も落っことすぞ。」
―ちっぽけな主上?
どういう意味かわからなかったが、主上を護る役目を頼まれたのだろう。
だがどう考えても、今の自分には釣り合わない仕事だった。
なぜ、自分なのだろう。