月物語2 ~始まりの詩にのせて~
彼らの前で、不正は難しい。
皆がそう思っている。
だからこそ、見落としていることもある。
不正は堂々とできるのだ。
彼らは数字が合えば満足する。
つまり、何の経費がどう使われようが、かまわないのである。
金大好は、よく二重に経費を落として、懐に入れていた。
雉院が王であった時は、それこそ自由に行動できた。
少々妙な出費でも、通ってしまう。
金大好は知っていた。
雉院は、豪華絢爛や無駄遣いが格別好きというわけではない。
美を求めていたから、そう思われがちだったが、どちらかというと質を重んじていたと思う。
当然、高額の出費もあったが、それほど頻繁でもない。
金大好は、そこを隠れ蓑にした。
今度の王は、また別の意味でやりやすそうだ。