月物語2 ~始まりの詩にのせて~
獅子が王からの書面を持ってきたのは、夜中だった。
部屋の灯りで起きていることがわかったのだろう。
獅子は優秀だ。
それは杜廷尉も認めていた。
女に対してこういう不躾な行動もとるが、何故か女官たちに人気があったりする。
王にも軍にも、獅子をやる気はない。
手元に留めておきたい人材だ。
獅子のことだから、禁軍の将校くらいの誘いは来ているだろう。
それでも今は、自分の掌中にある。
王の書簡を持ってきたときは些か驚いたが、獅子はまだ動かないようだ。