狂愛
「悠木むかつく」
「うそ! ごめんって、な?」
「……うん」
結局腹立ってても、悠木が優しく笑うからなんか許しちゃうんだよね。
「あっ! ねぇ美月、犯人って…元彼、とかじゃないよね?」
「そうだよ、あの最低男じゃねーの!」
沙希と仁が言っているのは一ヶ月前まで付き合っていた人のこと。
以前のバイト先で付き合った4歳年上で社員のコックの彼。
付き合い始めは楽しくて、ただそれだけだったのに。
いつの頃からか私は彼から暴力をふるわれるようになった。
殴っては優しくなり、殴っては優しくなり。
その繰り返しに私は限界を感じて別れを切り出した。
意外にもあっけなく承諾されたのを今でも鮮明に覚えている。