狂愛
「ふぅっ……こわかっ、た……」
「ごめん、本当にごめんなっ」
悠木はまるで自分が傷つけられたような表情をするので、あたしは首を左右に振った。
だって悠木が来てくれていなかったら、あたしは今頃アイツに……。
ガタガタと震える身体を悠木がそっと優しく包む。
「怖かったな、もう大丈夫だから――」
「…っ……うっ…」
彼に抱きしめられる体温が。
あたしをすっぽり包む腕の中が。
温かくて、優しくて、あたしは涙をこぼした。
しばらくそのままの状態だったが、幾分か落ち着きを取り戻した時にふと悠木の手に目が止まった。
「悠木、それ!」
彼の手の甲からは、鮮血が流れ出ていた。