狂愛

それはまるで私の歩調に合わせるかのようにリズミカルだ。



でもこの音……聞き覚えがある。


脳内で先週のバイト帰りのことがフラッシュバックする。



そうだ、あの日マンションの駐輪場で私の自転車だけパンクさせられていたんだ。


その切り口は鮮やかでまるで刃物で切られたようだった。

だから徒歩でコンビニのバイトまで行って。

そして深夜0時すぎ、帰宅途中この靴音がずっと後をつけてきていたはず。

その時は偶然だろうと思っていたけれど、あのどこか高級そうな革靴の音。




間違いない……!



疑惑が確信めいたものに変わった瞬間、身体がぞくっとし鳥肌がたった。

振り向く勇気もなく、私は一気に家まで走った。


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