狂愛
「――っ!!」
「突然来るから片付けられなかったよ。 でも全部良く撮れてるだろ?」
笑う彼の部屋には壁一面、数百枚の私の写真が張られていた。
天井まで隙間なく埋められている、いつとられたのか覚えのないそれら。
大学や家、そして前のバイト先での私が色々な角度から撮られている。
気味が悪くて思わず吐きそうになる。
でも喉がぎゅっとなるのを堪えて、声をふりだした。
「犯人は……悠木だったのね? 全部あなたがやってたのね?」
そんな私を嘲笑うかのようにいたずらが見つかったような顔を彼はする。
「あ~ぁ、ばれちゃったんだ。 どうして気付いたの?」
「俊に電話したでしょ。 それで分かったの、俊のことここまで詳しく知ってるのは悠木しかいないって。 私の家も自転車もバイトのことも全部悠木は知ってるものね!」
「なんだ、全部あいつのせいにしようと思って革靴まで履いたのに」
片方の口の端だけを上げて彼が笑う。
その笑みは今まで見たことのないもので、ひどく残酷でぞっとなる。