狂愛
後ろから響く歩幅の狭い革靴の音。
ついてこないでっ!
そう叫びたいが普段運動なんてしていないから息が上がって何も喋れない。
いや、声を出したくても恐怖で何も出なかった。
捕まったらどうなるんだろう…?
殺される…かもしれない。
そんなの絶対に嫌だっ!
やっと見えてきたマンションに泣きそうなほど嬉しくなり、全速力で駆ける。
しかし、ここで最悪なことを思い出した。
マンションはオートロック式で鍵をドアに差し込まなければ開かない。
私は走りながら手持ちのカバンから鍵を荒々しく探す。
ないっ! ないっ!
どこ!? どこなのよっ!!
その間もずっと後ろからアイツが追ってきている。
恐怖、緊張、焦り。
もう身体中の毛穴から汗が噴き出す。