狂愛
上半身は暗闇で全く見えない。
だがやはり革靴を履いているのだけがうっすらと伺える。
しばらくそうしているとソイツは一度も振り返らず、真っ直ぐに帰っていった。
それを見て私はその場にしゃがみ込んだ。
心臓が早鐘のように内側を叩いている。
安堵の溜め息を何度もつき、そして震える身体を抱きしめて部屋までなんとか歩く。
自分のテリトリーである見慣れた部屋に着いて、私は無意識のうちに涙していた。
「……助かっ…た。 助かったんだ…」
うわごとのように呟き続けるその言葉。
だが、私の恐怖は始まったばかりだった。