それだけでよかった

入学式が終わったあとの段取りもいつも通り。

正門のところで、冬樹は何の違和感もなく私を待っていた。

そういうのに、すこし特別な意味があったら、どれだけ幸せだろう。

「おう、帰るか」

「うん」

まだ幼い私は、だから壊れてしまうのが怖くて、胸の中の大きな気持ちは言わなかったんだ。

ただ目の前に冬樹が居てくれれば、それだけで、よかった。

それだけで。

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