修行しましょう!

森田さんはしばらくボーッと私を見ると

「あ、はい、分かりました」

と気の抜けた返事をし構内へ戻っていった。
多分まだ田村さんには会っていないだろう。しかし油断は禁物だ。あの二人を会わせるのは良くない。あの娘のためにも私のためにも。

「高田。いつもの喫茶店へ。すでに待っている」

田村さんだ。


「~で、就活はどうしてるの?」

「…。しますよ。来週から」

「そう」

「あなたはどうするんですか?」

「私、またお見合いの話があるの」

「そう。どうするんです?」

「父の顔を立てなきゃいけないから、今回は受けて立つ!」

「え…」

「それで断るわよ」

「そんな!すごい良い人だったらどうするんです?好きになっちゃったらどうするんです!?」

「私、大学院に進むから」

「そうなんですか?」

「多分もう合格したと思う。あんだけ勉強したし学費も稼いだし」

「キャバクラじゃないでしょうね…」

「もうそんなのやってないよ。これでも一番人気の講師なんだから」

「ならいいけど」

「ねぇ高田。私の夢。信じてくれてるんでしょ?そんな高田の事、信じていいんでしょ?」

「当たり前ですよ。そんな事を聞くなんて、少し疲れてるのですか?」

「お見合いして、断るでしょ。多分、私、家を追い出されるよ。きっと」

「え…」

「だから私にもあなたにも、覚悟が必要よ!高田!」

「覚悟なら、すでに固まっている!」


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