37度の微熱
俺はハッと我に返った。

今日のことを全部思い出してみた。

弥生は普通の女の子だったはずだ。

恋愛も奥手で、そのことで涙を流せる純粋な女だった。


金持ちだからって勝手な空想は良くない、と俺は自分に言い聞かせた。


今だってこんな俺にちゃんとお礼を言ってくれるんだから。


「ううん。俺も楽しかった。
…あんま悩むなよ?
あ、なんかあったら電話してよ。俺でよかったら相談乗るから」


俺はそう言って鞄から紙とペンを取り出し、自分の携帯番号を書いて弥生に渡した。


「…ありがとう。
今日安輝に出会えてよかった。あたし、ついていたよ」


そう言ってまた弥生は笑う。


俺も弥生に出会えてよかった。


言葉にはだせなかったけど、素直にそう思ったよ。
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