モノクローム
再び丁寧に履歴を振り返って見ても、そこには何ら変わらない優しいままのシロが居る。

ふざけながら、笑いながら、時には真面目に悩みを打ち明け、励まされたり…



目を閉じると、タイプ打ちされたように、幾つもの文字が浮かんでは消えて行く。
丸まった布団の中で、やけに足だけが冷えた。
その現実を受け止めたくなくて、瞼に力を入れ、意識を奥のほうへ沈める。




やがて朝が来て、目を覚ました私は寝返りを打ち、思いきり壁に頭をぶつけた。



「おはよ」

そう言いながら、爽やかにシロが笑っている。
その爽やかさは、漫画の主人公やテレビに映るアイドルに匹敵するくらいだ。

寝返りを打った途端、そんな顔が見えて驚いた私は、その顔にたじろいでしまう。




「リリーってさ、旦那以外の男と寝た事ねぇの?」


「は?」



彼の顔が段々と近付き、細い指が髪を通る。
その綺麗な顔から、私は目を逸らせなかった。


「試してみる?」

「なに言ってるの…」



細い指が髪から頬に滑り落ち、触れるか触れないかの距離で、ふと鼻息がかかる。


「うそ。するワケねぇじゃん。早く着替えたら?」





ほら、と手を引き、体を起こしてバスルームへと促した。
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