モノクローム
「ねぇ、どうして手錠がお互いの為なの?」



やっと新しい服に着替え、窓の外に洗濯物を干してた彼に訊く。
でも、一度こちらを向いただけで、その手を休める気はなさそうだった。

私は話を続けた。


「だって、手助けなら手錠なんて意味ないじゃん。逃げたいって言ったの私だし…」



暫く黙っていた彼が肩を上げて息をし、窓を静かに閉めて隣に腰を下ろす。
そしてタバコを手にしたまま、口を開いた。




「あのさ…」

「なに?」

「やっぱ、繋がせてくんねぇかな?」

「どうして?」


「なんとなく」

「なんとなくって、さっきので辞めたんじゃなかったの?」


「そうだけどさ…」



シロはタバコに火を点け、一息吐き出すと眉を歪めた。



「じゃぁ、どうして?」


「確かにさ、辞めようと思ったけど、無理だわ」


「だから、どうして?」


「だから、色々あんじゃん。分かんねぇ?」


「分かんない」



そんな物で分かったと言うほうが不思議だ。

彼は軽く舌打ちをし、わざと音を立て、煙りを吐き出しながらタバコを消す。



「つまり、此処から出たら俺もリリーも色々聞かれたりすんだろ。そう言うのウゼェじゃん」



確かに、彼には彼女が居るのだから、それはもっともである。
だが、繋ぐ必要性が全くないように思えるのは私だけだろうか…
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